隣のワカメは青く見える

九州を拠点に生きている現役3年目大卒看護師。最近の悩みは観劇と旅行に費やすお金をいかに捻出するか。そんな日々です。

19/7/25S@カモ猫 ゾルバとフォルトゥナータに貰った勇気

最初に言わせてもらいます。ファミリーミュージカルだと侮っているそこのあなた、いっぺん観て下さい。大切な何かを得るはずです。

今回は劇団四季の新作ファミリーミュージカル『カモメに飛ぶことを教えた猫』を観るために広島まで行ってきました。全国ツアーで九州にも来るのに何故このタイミングなのか。誕生日観劇のためです。

25歳を迎えるにあたって友達と過ごす事も考えましたが大学に入ってからずっと同じような日を繰り返していることに気が付いて「そうだ!誕生日観劇に行こう!」と思い立ち計画を始めました笑
そして選んだのは劇団四季の新作ファミミュです。働き始めて3年目、最近は責任がどんどんと重くなり仕事に対しての不安や恐怖が大きくなり始め自己嫌悪に陥る事も度々…。誕生日くらい童心に戻りたい、そうだ四季が新作ファミミュやるんだった、よしこの機会に行こう!と、幼い頃に「アンデルセン」を観て感じた感動を求めて決定!
冒頭で偉そうなことを言っていますが、実際侮っていたのは私の方でした。

最近ゾルバ役の笠松さんが続いていたのでそろそろ厂原さんにキャス変かなぁと思っていたところ、22日からちょうど厂原ゾルバへ。これがこれがやばかった。あんなに泣かされるとは思いませんでした。そして、厂ちゃんから時折滲み出る母性に終始ニマニマしておりました。(哲さんが演じてもあんなにいい母性が出せるのかは謎笑)


作品については公式HPにてじっくりご確認ください。
https://www.shiki.jp/applause/kamome/

本作品はドイツの港町ハンブルクで過ごす自由気ままな猫たち、カモメの群れ、過去の栄光を追い求めるチンパンジー、猫に復讐心を燃やすネズミたちの個性豊かな面々が登場するお話です。彼らにはそれぞれの生活があり、立場があり、思いがあります。ゾルバ達を見ているとCatsが頭をよぎるし、ネズミ達を見ているとガンバ達が頭をよぎります。悪者なんてどこにもいない、彼らは私達人間と同じように時には楽しく、時には必死に生きているのです。
なんか宗教みたいになってしまった笑
それはともかく、そんな彼らの生き様はまるで自分達を鏡写しにしたかのように感じ強く胸に刺さって来るので、物語に入り込もうとすればするほど泣けてきます。

まず主人公であるゾルバ。彼は喧嘩グセのある荒っぽい黒猫ですが、実は優しい心の持ち主と紹介されています。まるで雨の中捨てられた子犬を助けるヤンキーみたいな感じですね。そんなゾルバを演じる厂原さん、稽古写真を見ている限りでは可愛い笑顔に喧嘩っ早いゾルバらしさは微塵も感じられませんでしたが実際に舞台に立つ厂原ゾルバを観て思いました。『あぁ、ゾルバってヤンキーじゃないんだ』(?)
何を言いたいかというと、厂原ゾルバはただのヤンキー猫じゃないんだよ。ということです。ゾルバは幼い頃に川に落ちた自分を助ける代わりに母親を亡くしました。しかし母親のいない(父親の存在は不明)環境で育った彼の周りには仲間の存在がありました。そう、まるでシンバやアラジンを彷彿させます。彼らに共通して言えることは『幼さ』や『弱さ』を心に抱えている事です。
シンバにとってはラフィキが、アラジンにとってはジーニーがそうであったように、ゾルバにはフォルトゥナータが絶対的必要存在であり一歩を踏み出すためのキーパーソンなのです。
そんな弱くも優しい厂原ゾルバだからこそ、フォルトゥナータが卵から孵った時の喜び、彼女と過ごした時間、全てが愛おしく心から家族として彼女を愛していた為、自分の尻尾を代償として差し出す勇気があったのだろうし、そんな彼女を心から信じていたからこそ塔のてっぺんに連れて行ったのだろう。ただ、フォルトゥナータを愛おしく思うあまり翼を広げるよう促す事が精一杯で、突き落とすような真似は苦しすぎて出来ない!!!でも、彼女を飛ばせないとどの道越冬出来ず死んでしまう…という心の葛藤がガンガンに伝わってきて、もう号泣でした。
というか、塔の上での恐怖を隠しながら強がる演技がもうなんというか、涙なしには見れません。あんなにぶつくさ言いながら温め続けた卵、中々孵らないからとハンマーで卵を割ろうとしたあの時、「ママ」と言われ嫌がりながらも満更ではなかった瞬間、例え尻尾を失う事になるとしてもフォルトゥナータを飛ばせたいという限りなく強い想い、その全てが走馬灯のように蘇るような表現力がほんともう、観てるこっちが苦しすぎました。
フォルトゥナータが飛び降りる瞬間の叫びと無事に空へ羽ばたいたという安堵。ね、思い出すだけでも泣けてきてしまう。本作品でのテーマである『自分を信じて』は、今の自分と重なる思いもあり、胸に響き勇気を貰える楽曲でした。

厂原ゾルバは非常にコミカルで初っ端から優しさの塊猫です。ネズミ達をいびっている時もマチアスにちょっかいかけている時も、拭いきれない優しさ。笠松ゾルバは本当に容赦なさそうだもんなぁ。




劇団四季公式より 左:厂原ゾルバ 右:笠松ゾルバ》


フォルトゥナータの前田さんは小さくてそれでいてとっても可愛い笑顔が、純粋でキラキラした瞳を持つ子カモメにぴったりで本当に可愛かった☺️卵から孵って『マーマ』という場面は、もう厂ちゃんと一緒に客席でニターってにやけてたもの笑
フォルトゥナータは成長するにつれて自分でもゾルバ達とは何か違うと薄々勘づきながらも自分は猫だと言い張ります。まるで自分に言い聞かせるかのように。それでもやはり空への憧れは遺伝子的に彼女の中に刻み込まれているのです。白い羽根へ生え変わった彼女の姿は美しくもどこか歪。それは自分に嘘をつき真実から目を背けているから。
ゾルバに説得され、母親《ケンガー》の強い思いを受け取り、彼女は大空へ飛び立つ決心を固めますがこれまで猫として生きてきた為簡単に空へ飛び立つことは出来ません。世界って残酷なものよね。それでも諦めなかったのはゾルバの、ブブリーナ達の自分へ対する強い思いを目の前で見せつけられ感じ取ったから。
自分はカモメで居るべき場所はここではないと決めたのも、塔の上から飛び立つと決めたのも、全て小さな彼女自身。ゾルバの覚悟が彼女に勇気を与えたのでしょう。見事大空へ羽ばたいた彼女の笑顔はどこまでも眩しく輝いていて、その姿こそ本当に美しかった。あれ?カモメが空を飛ぶお話でしょ?なんでこんなに感動してるんだよ。って自分に突っ込みを入れながらもカーテンコールまで涙は止まりませんでした。
『フォルトゥナータ』=『幸せな者』
君がこの世界に生まれてきた事は、沢山の奇跡の集まりなんだよ。君は生まれてきて、僕たちと出会って幸せだったかい?
と、ゾルバの声が聞こえてきそう。きっとゾルバの答えはまがいもなく『僕は幸せだったよ』


そして、個人的にめちゃくちゃ良かったのは、この話の鍵を握る明戸さん演じるマチアス。彼は過去に飛行機に乗り大空へと飛び立った経験のあるチンパンジー。今でこそ捻くれた呑んだくれになっていますが、その心は未だに空への憧れと情熱を燃やし続けているのです。ゾルバはマチアスの情熱を、マチアスはゾルバの優しさを知らないまま2人は互いに罵り合う日々を送っていますが、最後には両者共に言葉には出さずも分かり合います。
マチアスってきっと一番の年長者であり、街の中で唯一外の世界を見てきた言わば経験者。ハンブルク育ちで大きな顔をするゾルバは達の事は、さも気に食わなかったのでしょう。それでもゾルバの熱い想いに自分と似ているところを感じ取ることのできる優しい心の持ち主なのです。そこが彼の魅力なのでしょう。

出口では奇跡的に寺内さん→志村さん→厂原さん→前田さん。と握手をさせていただきました。はぁぁ、こんなにも舞台上の皆さんからパワーを貰ったんだから仕事も気合い入れやんなぁ。次は九州公演。それまでに何か少しでも成長出来るよう頑張ろう😌